微細加工とは?半導体やMEMSを支える加工技術をわかりやすく解説

研究分野図鑑
スポンサーリンク

スマートフォンやパソコン、自動車、センサーなど、現代の電子機器には非常に小さな電子部品が数多く使われています。

こうした部品を作るうえで欠かせないのが、**微細加工(Microfabrication)**です。

微細加工では、μm(マイクロメートル)やnm(ナノメートル)といった非常に小さなスケールで、材料を削ったり、薄い膜を形成したりして構造を作ります。

特に、

  • 半導体
  • MEMS
  • センサー
  • マイクロ流体デバイス
  • 光学デバイス

などの製造には欠かせない技術です。

この記事では、

「微細加工とは何なのか?」

「普通の機械加工とは何が違うのか?」

「半導体やMEMSではどのように使われているのか?」

といった疑問について、理系大学生や初めて微細加工を学ぶ人にもわかりやすく解説します。

スポンサーリンク

微細加工とは?

微細加工とは、材料の表面や内部に非常に小さな構造やパターンを形成する加工技術の総称です。

英語では、

Microfabrication

と呼ばれます。

一般的な機械加工では、旋盤やフライス盤などを使ってmm(ミリメートル)単位の部品を加工します。

一方、半導体やMEMSの微細加工では、

  • μm(マイクロメートル)
  • nm(ナノメートル)

といった、さらに小さなスケールを扱います。

微細加工で使われる単位

単位の関係は次の通りです。

単位大きさ
1 mm10⁻³ m
1 μm10⁻⁶ m
1 nm10⁻⁹ m

つまり、

1 mm = 1,000 μm

1 μm = 1,000 nm

です。

人間の髪の毛の太さがおよそ数十〜100 μm程度なので、微細加工では髪の毛よりもはるかに小さな構造を作ることも珍しくありません。

微細加工は何に使われている?

微細加工は、私たちの身の回りにある多くの電子機器を支えています。

代表的な用途が、

半導体とMEMSです。

例えばパソコンやスマートフォンに搭載されているCPUやメモリでは、シリコン基板の上に非常に細かいトランジスタや配線が作られています。

また、スマートフォンの加速度センサーやジャイロセンサー、マイクなどには、微小な機械構造を持つMEMSが利用されています。

微細加工が使われる主な分野

微細加工は、半導体やMEMS以外にも幅広く利用されています。

  • 医療機器
  • バイオデバイス
  • マイクロ流体デバイス
  • 光学デバイス
  • ディスプレイ
  • 太陽電池
  • 各種センサー

電子機器だけでなく、医療やバイオ分野などにも応用が広がっています。

なぜ微細加工が重要なの?

微細加工が重要な理由の一つが、電子機器の小型化と高性能化です。

例えば半導体では、トランジスタや配線を小さくすることで、同じ面積のチップ上により多くの回路を形成できます。

その結果、

  • より多くの回路を集積できる
  • デバイスを小型化できる
  • 高機能な電子機器を作れる
  • センサーなどを小型化できる

といったメリットがあります。

スマートフォンが高性能でありながら手のひらに収まるサイズになっている背景にも、こうした微細加工技術があります。

微細加工の基本は「削る・付ける・形を決める」

微細加工は一見複雑に見えますが、基本的な考え方はそれほど難しくありません。

大きく分けると、

材料を削る

材料を付ける

加工する場所を決める

という工程を組み合わせて目的の構造を作ります。

例えば半導体製造では、

  1. 基板上に薄い膜を作る
  2. 加工したい部分のパターンを形成する
  3. 不要な部分を削る
  4. 再び薄い膜を形成する

といった工程を何度も繰り返します。

このとき代表的に使われるのが、

  • フォトリソグラフィ
  • エッチング
  • 成膜
  • ドーピング
  • CMP

といった技術です。

代表的な微細加工技術

フォトリソグラフィ

微細加工を理解するときに、まず知っておきたいのがフォトリソグラフィです。

フォトリソグラフィとは、光を利用して基板上に微細なパターンを形成する技術です。

簡単に言えば、

「基板のどこを加工するのかを決めるための技術」

です。

半導体製造では、シリコンウェハ上に回路パターンを形成するときに利用されます。

フォトリソグラフィの基本的な流れ

一般的には、次のような工程で行われます。

  1. 基板にフォトレジストを塗る
  2. 光を照射する
  3. レジストを現像する
  4. 必要な部分だけレジストを残す
  5. エッチングなどを行う
  6. 最後に不要になったレジストを除去する

ここで登場するフォトレジストとは、光が当たることで性質が変化する材料です。

光を照射した部分が現像液に溶けやすくなるタイプや、反対に溶けにくくなるタイプがあります。

この性質を利用することで、非常に細かいパターンを基板上に形成できます。

エッチング

フォトリソグラフィでパターンを形成した後、不要な部分を取り除くために使われるのがエッチングです。

エッチングは、

材料を選択的に除去する加工技術

と考えるとわかりやすいでしょう。

代表的な方法には、

  • ウェットエッチング
  • ドライエッチング

があります。

ウェットエッチング

ウェットエッチングは、薬液を使って材料を溶かす方法です。

構造が比較的シンプルで、装置もドライエッチングと比べると簡単です。

一方で、材料が深さ方向だけでなく横方向にも削られる場合があります。

このように横方向にも加工が進む性質を等方性エッチングと呼びます。

微細で垂直な構造を作りたい場合には、加工形状の制御が課題になることがあります。

ドライエッチング

ドライエッチングでは、プラズマや反応性ガスなどを利用して材料を加工します。

ウェットエッチングと比較して加工方向を制御しやすいため、微細な半導体構造を作る際に広く使われています。

代表的な方法が、

RIE(Reactive Ion Etching:反応性イオンエッチング)

です。

RIEでは、化学反応とイオンによる物理的な作用を組み合わせることで、微細なパターンを形成します。

成膜

微細加工では、材料を削るだけではなく、基板上に新しい材料を付ける工程も重要です。

薄い膜を形成する工程を成膜と呼びます。

半導体デバイスでは、

  • 絶縁膜
  • 金属膜
  • 半導体膜
  • 保護膜

など、さまざまな薄膜が使用されています。

代表的な成膜方法には、

  • PVD
  • CVD
  • ALD

があります。

PVD

PVDは、

Physical Vapor Deposition(物理気相成長)

の略です。

代表的な方法として、

  • 真空蒸着
  • スパッタリング

などがあります。

特に金属薄膜を形成する際によく利用されます。

CVD

CVDは、

Chemical Vapor Deposition(化学気相成長)

の略です。

気体の原料を基板表面で化学反応させ、薄膜を形成します。

半導体製造で広く利用されている成膜技術です。

ALD

ALDは、

Atomic Layer Deposition(原子層堆積)

と呼ばれる技術です。

原子層レベルで膜厚を制御しやすいことが特徴で、非常に薄く均一な膜を作りたい場合に利用されます。

ドーピング

半導体デバイスを作るうえでは、ドーピングも重要です。

ドーピングとは、シリコンなどの半導体に少量の不純物を加え、電気的な性質を変化させることです。

この操作によって、

  • n型半導体
  • p型半導体

を作り分けます。

イオン注入

代表的な方法の一つが、

イオン注入

です。

不純物となるイオンを加速してシリコンに打ち込むことで、特定の領域の電気的性質を変化させます。

トランジスタなどの半導体デバイスでは、こうした加工によって電気が流れる領域を作り分けています。

CMP

CMPは、

Chemical Mechanical Polishing

の略で、日本語では化学機械研磨と呼ばれます。

半導体では薄膜を何層も積み重ねながら回路を形成していきます。

ところが、加工を繰り返すと基板表面に凹凸が生じます。

表面に大きな凹凸があると、その後のフォトリソグラフィや成膜を正確に行いにくくなります。

そこでCMPを利用し、基板表面を平坦にします。

CMPは、

化学的な反応と機械的な研磨を組み合わせて表面を平らにする技術

です。

多層構造を持つ半導体デバイスの製造では非常に重要な工程です。

微細加工と半導体の関係

微細加工が最も重要となる分野の一つが半導体製造です。

CPUやメモリなどの半導体デバイスは、シリコンウェハの上にトランジスタや配線を形成することで作られます。

ただし、一度加工すれば完成するわけではありません。

半導体製造の基本的な流れ

例えば、

成膜

↓

フォトリソグラフィ

↓

エッチング

↓

ドーピング

↓

平坦化

といった工程を何度も繰り返しながら、複雑な構造を形成していきます。

つまり、半導体製造とは、

さまざまな微細加工技術を組み合わせて、シリコン上に複雑な電子回路を作るプロセス

とも言えます。

微細加工とMEMSの関係

微細加工技術が使われるもう一つの代表的な分野がMEMSです。

MEMSは、

Micro Electro Mechanical Systems

の略で、日本語では微小電気機械システムなどと呼ばれます。

MEMSの大きな特徴は、電子回路だけでなく、実際に動いたり変形したりする微小な機械構造を作ることです。

MEMSの代表例

代表的なMEMSデバイスには、

  • 加速度センサー
  • ジャイロセンサー
  • 圧力センサー
  • MEMSマイク
  • インクジェットプリンターヘッド

などがあります。

スマートフォンにも複数のMEMSセンサーが搭載されています。

MEMSでは3次元的な微細構造を作る

MEMSでは、シリコン基板などを加工して、

  • 梁
  • 膜
  • バネ
  • 可動電極
  • 微小な空洞

といった3次元構造を作る場合があります。

そのため、半導体の回路形成とは少し異なり、立体的な微細構造を作る加工技術が重要になります。

代表的な技術の一つが、

DRIE(Deep Reactive Ion Etching)

です。

DRIEでは、シリコンを深く、かつ比較的垂直に加工できます。

そのため、MEMSの立体構造を形成する際に利用されています。

バルクマイクロマシニングとは?

MEMSの代表的な加工方法の一つが、バルクマイクロマシニングです。

バルクマイクロマシニングでは、シリコン基板そのものを削って構造を作ります。

基板内部まで加工するため、

  • 薄い膜
  • 深い溝
  • 空洞
  • 可動構造

などを形成できます。

表面マイクロマシニングとは?

もう一つの代表的な方法が、表面マイクロマシニングです。

表面マイクロマシニングでは、基板上に薄膜を積み重ね、その薄膜を加工して微小構造を形成します。

基板そのものを大きく削るバルクマイクロマシニングに対し、基板表面付近に構造を作るのが特徴です。

微細加工はなぜクリーンルームで行う?

半導体やMEMSの微細加工は、多くの場合クリーンルームで行われます。

理由は、微細加工で扱う構造が非常に小さいからです。

私たちから見ると小さなホコリでも、μmレベルの構造から見れば非常に大きな異物になります。

もし微細な回路上に粒子が付着すると、

  • 配線が断線する
  • 回路がショートする
  • パターン形成に失敗する
  • デバイスの特性が変化する

といった問題につながる可能性があります。

そのためクリーンルームでは、空気中の粒子をできるだけ減らし、作業者も専用のクリーンスーツを着用します。

半導体製造では、加工技術だけでなく加工環境を清浄に保つ技術も重要なのです。

微細加工ではどんな装置を使う?

微細加工では、工程ごとにさまざまな装置を使用します。

代表例をまとめると次のようになります。

工程主な装置
レジスト塗布スピンコーター
露光マスクアライナー・露光装置
ドライエッチングRIE・DRIE装置
金属成膜スパッタ装置・蒸着装置
薄膜形成CVD・ALD装置
表面観察光学顕微鏡・SEM
膜厚・段差測定段差計・エリプソメーター

大学の研究室や共同利用施設などで、こうした装置を実際に使うこともあります。

装置の名前だけを見ると難しそうですが、

「形を決める」「削る」「膜を付ける」「観察する」

という役割で整理すると理解しやすくなります。

微細加工と機械加工の違い

微細加工と一般的な機械加工では、加工するサイズだけでなく、使われる原理にも違いがあります。

一般的な機械加工半導体・MEMSの微細加工
主な加工サイズmm〜μm程度μm〜nm程度
主な加工方法切削・研削・穴あけリソグラフィ・エッチング・成膜
主な道具・原理刃物・工具光・プラズマ・化学反応・イオン
主な用途機械部品半導体・MEMS・センサー

ただし、「微細加工」という言葉は広い意味で使われるため、微細な切削加工やレーザー加工などを指す場合もあります。

半導体分野で微細加工と言う場合には、特にリソグラフィ・エッチング・成膜などを組み合わせた加工プロセスを指すことが多いです。

微細加工は電気電子だけの技術ではない

微細加工というと半導体のイメージが強いですが、実際にはさまざまな学問分野が関係しています。

電気電子工学

半導体やセンサー、電子回路の仕組みを理解するために必要です。

物理学

半導体の性質やプラズマ、光などを理解するうえで関係します。

化学

エッチング、現像、成膜など、多くの加工工程で化学反応が利用されています。

材料工学

シリコン、金属、絶縁体、ポリマーなどの特性を理解するために重要です。

機械工学

MEMSのバネや梁など、微小な機械構造を設計するときに関係します。

このように微細加工は、複数の工学分野が組み合わさった技術と言えます。

微細加工を勉強するなら何から始める?

大学で初めて微細加工を学ぶ場合、最初からすべての技術を覚える必要はありません。

まずは、

フォトリソグラフィで加工する場所を決める

↓

エッチングで不要な部分を削る

↓

成膜で必要な材料を付ける

という基本的な流れを理解するのがおすすめです。

そのうえで、

  • 半導体工学
  • 電子デバイス
  • MEMS
  • 材料工学
  • 真空工学
  • プラズマ
  • ナノテクノロジー

などを学んでいくと、それぞれの加工技術がどのようにつながっているのか理解しやすくなります。

微細加工に関するよくある疑問

微細加工とナノ加工の違いは?

明確な境界が決まっているわけではありませんが、より小さなnmスケールの構造を対象とする加工をナノ加工と呼ぶことがあります。

微細加工という大きなカテゴリーの中に、ナノ加工を含めて説明されることもあります。

半導体製造で重要な微細加工技術は?

半導体製造では、回路パターンを形成するリソグラフィが非常に重要な工程の一つです。

ただし実際の半導体は、リソグラフィだけで作れるわけではありません。

エッチング・成膜・イオン注入・CMPなど、多くの工程を組み合わせることで初めてデバイスが完成します。

MEMSと半導体は何が違う?

一般的な半導体デバイスでは、主に電子を制御するための回路を形成します。

一方MEMSでは、電子回路に加えて、

  • 動く
  • 曲がる
  • 振動する
  • 圧力を受けて変形する

といった機械的な構造を持つことが大きな特徴です。

まとめ

微細加工とは、μmやnmレベルの非常に小さな構造を形成するための加工技術です。

特に、

  • 半導体
  • MEMS
  • センサー
  • マイクロ流体デバイス
  • 光学デバイス

などを製造するうえで欠かせません。

代表的な微細加工技術には、

  • フォトリソグラフィ
  • エッチング
  • 成膜
  • ドーピング
  • CMP

などがあります。

半導体やMEMSについて勉強するときは、まず、

「フォトリソグラフィで形を決める」

「エッチングで削る」

「成膜で材料を付ける」

という3つの流れを理解すると、製造プロセス全体をイメージしやすくなります。

微細加工は、電気電子工学だけでなく、物理・化学・材料・機械などさまざまな分野が関係する技術です。

半導体やMEMSについて学びたい人にとって、微細加工はぜひ押さえておきたい基礎知識の一つと言えるでしょう。

コメント

タイトルとURLをコピーしました