※本記事にはアフィリエイト広告(PR)を含む場合があります。
はじめに
3Dプリンターは、研究用の治具や試作品、小物、部品などを手軽に作れる便利な装置です。
私自身も、実験で使う治具や型を3Dプリンターで作ることがあります。設計した形をすぐに出力できるため、研究やものづくりではとても役立ちます。
しかし、3Dプリンターで作った部品は、完成した直後の状態がずっと続くわけではありません。
時間が経つと、
「フィラメントが折れやすくなった」
「造形物が反ってきた」
「表面が白っぽくなった」
「部品が少し変形した」
「レジンがうまく硬化しにくい」
といった変化が起こることがあります。
この記事では、3Dプリンターで使われる樹脂がなぜ劣化するのか、湿気・紫外線・熱・荷重・保管状態の観点から、理系大学生の実験目線でわかりやすく整理します。
3Dプリンター樹脂とは?

3Dプリンター樹脂といっても、使う方式によって材料は大きく異なります。
代表的なのは、FDM方式で使うフィラメントと、光造形方式で使うレジンです。
FDM方式では、PLA、ABS、PETG、TPU、ナイロンなどのフィラメントを熱で溶かして積み重ねます。
一方、光造形方式では、液体レジンに紫外線などの光を当てて硬化させ、形を作ります。
どちらも樹脂材料ですが、劣化の原因や注意点は少し違います。

この記事では、FDMフィラメントと光造形レジンの両方を含めて、3Dプリンター樹脂の劣化について解説します。
3Dプリンター樹脂が劣化する主な原因
3Dプリンター樹脂の劣化には、いくつかの原因があります。
主な劣化要因を整理すると、次のようになります。

3Dプリンター樹脂は、印刷できたら終わりではありません。
材料の保管方法、造形後の使い方、設置環境によって、時間とともに性質が変化することがあります。
湿気による劣化

FDMフィラメントで特に注意したいのが湿気です。
フィラメントは空気中の水分を吸収することがあります。特に、PETG、ナイロン、TPUなどは湿気の影響を受けやすい材料として知られています。
吸湿したフィラメントをそのまま使うと、造形時に次のような問題が起こることがあります。
- ノズルからパチパチと音がする
- 表面が荒れる
- 糸引きが増える
- 気泡が出る
- 積層の密着が悪くなる
- 強度が低下する
- 造形物の見た目が悪くなる
これは、フィラメント内に含まれた水分が加熱時に蒸発し、押し出し状態を不安定にするためです。
見た目では問題なさそうなフィラメントでも、実際に印刷すると表面がザラついたり、細かい気泡が出たりすることがあります。
特に研究用の治具や型を作る場合、表面状態や寸法精度が重要になることがあります。そのため、フィラメントの吸湿は無視できない問題です。
紫外線による劣化

3Dプリンター樹脂は、紫外線によって劣化することがあります。
屋外や窓際に置いた部品は、長時間光に当たることで、変色、黄ばみ、脆化、表面の劣化が起こる場合があります。
特に光造形レジンは、光によって硬化する材料です。そのため、未使用の液体レジンを直射日光の当たる場所に置くと、容器内で変質したり、硬化が進んだりする可能性があります。
光造形レジンを扱う場合は、次の点に注意が必要です。
- 使用後はボトルのキャップをしっかり閉める
- 直射日光を避ける
- 高温になる場所に置かない
- 冷暗所で保管する
- 開封日をメモしておく
- 古いレジンは使用前によく確認する
造形後のレジン部品も、紫外線の影響を受けることがあります。
しっかり二次硬化することは大切ですが、必要以上に強い光を当て続けると、材料によっては硬くなりすぎたり、脆くなったりする場合があります。
熱による変形
3Dプリント部品は、熱によって変形することがあります。
特にPLAは扱いやすく、初心者にも人気の材料ですが、高温環境にはあまり強くありません。
たとえば、次のような場所では注意が必要です。
- 夏場の車内
- 直射日光が当たる窓際
- ヒーターや乾燥機の近く
- 高温になる実験装置の近く
- 加熱工程を含む実験環境
PLAで作った部品を高温環境に置くと、柔らかくなったり、反ったり、寸法が変わったりすることがあります。
研究用の治具や型として使う場合、わずかな変形でも実験結果に影響する可能性があります。
たとえば、サンプルを固定する治具、液体を流し込む型、電極位置を合わせるスペーサーなどでは、寸法のズレが問題になることがあります。
温度がかかる用途では、PLAではなく、PETG、ABS、ASA、ナイロン、耐熱系フィラメントなどを検討する必要があります。
荷重によるクリープ

3Dプリンター樹脂の劣化を考えるうえで、クリープも重要です。
クリープとは、一定の力が長時間かかり続けることで、材料が少しずつ変形する現象です。
たとえば、3Dプリントした部品をクランプ、固定具、支え、スペーサーとして使っている場合、最初は問題なくても、時間が経つと少しずつたわんだり、形が変わったりすることがあります。
特に、次のような用途では注意が必要です。
- ねじで締め付ける部品
- 長時間荷重がかかる固定具
- サンプルを押さえる治具
- 重いものを支える部品
- 寸法精度が重要なスペーサー
- 変形すると測定条件が変わる実験部品
3Dプリント部品は、造形方向や積層方向によって強度が変わることもあります。
そのため、荷重がかかる方向を考えて設計することが大切です。
単に「厚くすれば強い」と考えるのではなく、力がどの方向にかかるのか、積層方向に対して割れやすくないか、長時間使っても変形しにくいかを考える必要があります。
保管状態による劣化
3Dプリンター樹脂は、保管状態によっても劣化します。
FDMフィラメントの場合、開封後にそのまま部屋に置いておくと、湿気を吸いやすくなります。特に梅雨の時期や湿度の高い部屋では注意が必要です。
フィラメントの保管では、次のような工夫が有効です。
- 密閉袋に入れる
- 密閉容器に入れる
- 乾燥剤を入れる
- 湿度計を一緒に入れる
- 長期間使わない材料は開封したまま放置しない
- 吸湿した材料は乾燥してから使う
光造形レジンの場合は、液体の状態で保管するため、フィラメントとは違う注意が必要です。
レジンの保管では、次の点に気をつけます。
- ボトルのキャップをしっかり閉める
- 直射日光を避ける
- 高温を避ける
- 冷暗所で保管する
- 開封日を記録する
- 使用前に沈殿や変色がないか確認する
- 使用済みレジンを新品ボトルへ戻すときは注意する
レジンは材料によって保管条件が異なるため、必ず使用しているメーカーの説明を確認することが大切です。
後処理不足によるトラブル
光造形レジンでは、造形後の洗浄や二次硬化が不十分だと、表面がべたついたり、強度が不安定になったりすることがあります。
造形直後のレジン部品には、未硬化レジンが残っている場合があります。
そのまま使うと、
- 表面がべたつく
- においが残る
- 強度が安定しない
- 寸法が変化しやすい
- 周囲の材料に影響する
といった問題につながる可能性があります。
そのため、光造形レジンでは、洗浄、乾燥、二次硬化を適切に行うことが重要です。
ただし、二次硬化を長くしすぎれば必ず良いというわけではありません。材料によっては、硬化しすぎることで脆くなる場合もあります。
メーカーが推奨する硬化時間や照射条件を確認し、用途に合わせて調整することが大切です。
実験用治具として使うときの注意点
3Dプリンターは、研究や実験で使う治具を作るときにとても便利です。
しかし、実験用治具として使う場合は、単に形ができればよいわけではありません。
次のような点にも注意が必要です。
- 長時間使っても変形しないか
- 液体に触れても問題ないか
- 温度がかかっても形が変わらないか
- ねじ締めで割れないか
- 寸法精度が必要な部分は安定しているか
- サンプルに影響を与えない材料か
- 使用後に洗浄しやすい形か
たとえば、ゲルや液体を扱う実験で3Dプリントした型を使う場合、樹脂表面の状態や吸水、薬品との相性が問題になる可能性があります。
また、何度も使う治具では、少しずつ削れたり、反ったり、締め付け部が緩んだりすることがあります。
研究用途では、造形直後だけでなく、使用後の状態も確認しておくと安心です。
劣化を防ぐための保管方法

3Dプリンター樹脂の劣化を防ぐには、材料ごとに適切な保管をすることが重要です。
FDMフィラメントの場合は、湿気対策が基本です。
おすすめは、密閉容器や密閉袋に入れ、乾燥剤と一緒に保管する方法です。湿度計を入れておくと、保管状態を確認しやすくなります。
特に、PETG、ナイロン、TPUなどは、使う前に乾燥させることで造形品質が安定しやすくなります。
PLAでも、長期間放置すると折れやすくなったり、造形品質が悪くなったりすることがあるため、開封後は保管に気をつけた方がよいです。
光造形レジンの場合は、光と温度を避けることが重要です。
ボトルのキャップを閉め、直射日光を避け、冷暗所で保管します。開封日を書いておくと、古いレジンを把握しやすくなります。
造形物を長持ちさせる工夫
材料だけでなく、完成した造形物も劣化します。
造形物を長持ちさせるには、次のような工夫が有効です。
- 直射日光を避ける
- 高温環境に置かない
- 強い荷重を長時間かけない
- 水分や薬品に触れる用途では材料を選ぶ
- 屋外用途では耐候性のある材料を使う
- 寸法が重要な部品は定期的に確認する
- 消耗品として交換できる設計にする
特に、研究用の治具や実験部品では、壊れにくさだけでなく、再現性も重要です。
同じ治具を使っているつもりでも、少し変形していれば、サンプルの位置や圧力、測定条件が変わってしまう可能性があります。
そのため、重要な治具は定期的に状態を確認し、必要に応じて作り直すことも大切です。
材料選びで劣化を減らす
劣化を防ぐには、保管だけでなく材料選びも重要です。
たとえば、見た目確認用の試作品ならPLAで十分な場合が多いです。しかし、長期間使う治具や温度がかかる部品では、PLA以外の材料を検討した方がよい場合があります。
材料ごとの特徴を簡単にまとめると、次のようになります。

どの材料が最適かは、用途によって変わります。
「とりあえずPLA」ではなく、熱がかかるのか、荷重がかかるのか、水分に触れるのか、長期間使うのかを考えて選ぶことが大切です。
劣化のサイン
3Dプリンター樹脂が劣化している可能性があるサインとしては、次のようなものがあります。
フィラメントの劣化サイン
- 折れやすい
- 表面が白っぽい
- 印刷中にパチパチ音がする
- 糸引きが増える
- 表面が荒れる
- 造形物に気泡や穴が出る
- 積層が安定しない
造形物の劣化サイン
- 反りが出る
- ひび割れがある
- 変色している
- 表面が粉っぽい
- 触ると脆い
- 寸法が変わっている
- ねじ穴が緩くなる
光造形レジンの劣化サイン
- 液体の色が変わる
- 沈殿が多い
- 硬化しにくい
- 造形失敗が増える
- 表面がべたつく
- 造形物が脆い
これらの変化が見られた場合は、材料の保管状態や使用期限、乾燥状態、造形条件を確認してみるとよいです。
まとめ
3Dプリンター樹脂は、印刷できたら終わりではありません。
湿気、紫外線、熱、荷重、保管状態、後処理によって、時間とともに性質が変化することがあります。
特にFDMフィラメントでは、湿気による吸湿が造形品質に大きく影響します。フィラメントは密閉容器や乾燥剤を使って保管し、必要に応じて乾燥してから使うことが大切です。
光造形レジンでは、直射日光や高温を避け、ボトルをしっかり閉めて冷暗所で保管することが重要です。また、造形後の洗浄や二次硬化も、仕上がりや強度に関係します。
研究用の治具や型として3Dプリント部品を使う場合は、劣化や変形が実験結果に影響する可能性があります。
そのため、材料の選び方、保管方法、使用環境、長期使用時の変形まで考えておくことが大切です。
3Dプリンターはとても便利な道具ですが、樹脂材料の特徴を理解して使うことで、より安定した部品や治具を作ることができます。
FAQ
3Dプリンターのフィラメントは劣化しますか?
はい、劣化することがあります。特に湿気を吸うと、造形時に気泡、糸引き、表面荒れ、強度低下などが起こる場合があります。
PLAは湿気で劣化しますか?
PLAも湿気の影響を受けることがあります。ただし、ナイロンやPETGなどと比べると吸湿の影響は小さい場合があります。長期間放置する場合は、密閉して保管するのがおすすめです。
フィラメントはどのように保管すればよいですか?
密閉袋や密閉容器に入れ、乾燥剤と一緒に保管するのがおすすめです。湿度計を入れると、保管状態を確認しやすくなります。
光造形レジンはどう保管すればよいですか?
ボトルのキャップをしっかり閉め、直射日光や高温を避けて冷暗所で保管します。開封日を書いておくと管理しやすいです。
3Dプリント部品は屋外で使えますか?
材料によります。屋外では紫外線や雨、温度変化の影響を受けるため、PLAよりも耐候性のある材料を選んだ方がよい場合があります。
3Dプリンターで作った治具は長期間使えますか?
用途によります。荷重や熱がかかる場合、少しずつ変形する可能性があります。寸法精度が重要な治具は、定期的に状態を確認することが大切です。
参考情報
- 3Dプリンターフィラメントの保管・乾燥に関するメーカー・材料販売元の技術情報
- 光造形レジンの安全な取り扱い・保管に関するメーカー資料
- PLAなど3Dプリント部品のクリープ挙動に関する研究論文
- 紫外線による3Dプリント樹脂の劣化に関する研究情報


コメント