※本記事にはアフィリエイト広告を含みます。
オシロスコープは、電圧波形を時間に対して表示できる測定器です。
大学実験や電子回路の測定では、電圧の大きさや周波数だけでなく、2つの信号の位相差を調べることがあります。
たとえば、RC回路やRL回路、交流回路の実験では、
「入力電圧と出力電圧の位相がどれくらいずれているか」
「電圧と電流の位相差は何度か」
「コンデンサやコイルによって波形がどれくらい遅れるか」
を測定する場面があります。
しかし、初めてオシロスコープで位相差を測る人にとっては、
「2つの波形をどう比べればいいの?」
「時間差から位相差をどう計算するの?」
「位相が進む・遅れるってどう判断するの?」
と迷うことも多いと思います。
この記事では、オシロスコープで位相差を測定する方法を、2ch波形の読み方、時間差の求め方、計算式、大学実験でよくある注意点まで初心者向けにわかりやすく解説します。
位相差とは

位相差とは、2つの周期的な波形がどれだけずれているかを表す量です。
同じ周波数の正弦波が2つあるとき、山や谷の位置が完全に一致していれば、位相差は0°です。
一方、片方の波形がもう片方より横方向にずれている場合、そのずれを角度で表したものが位相差です。
位相差が0°の場合
2つの波形の山、谷、0Vを通過するタイミングがそろっている場合、位相差は0°です。
この状態を「同相」といいます。
同相の場合、2つの波形は同じタイミングで変化します。
位相差がある場合
片方の波形の山が、もう片方の波形より後に現れる場合、波形が時間的に遅れていると考えます。
逆に、片方の波形の山が先に現れる場合、その波形は進んでいると考えます。
位相差は、時間のずれを角度に変換して表します。
1周期は360°なので、1周期の半分ずれていれば180°、4分の1周期ずれていれば90°です。
位相差を測定する場面
オシロスコープで位相差を測定する場面は多くあります。
RC回路の入力と出力の位相差
RC回路では、コンデンサの影響によって入力電圧と出力電圧の位相がずれることがあります。
ローパスフィルタやハイパスフィルタの実験では、入力信号と出力信号をオシロスコープのCH1・CH2で同時に表示し、位相差を測定することがあります。
RL回路の電圧と電流の位相差
コイルを含むRL回路では、電流と電圧の位相がずれることがあります。
実験では、抵抗にかかる電圧を電流に対応する波形として観察し、入力電圧との位相差を求めることがあります。
交流回路の電圧と電流の位相差
交流回路では、抵抗、コンデンサ、コイルの組み合わせによって電圧と電流の位相関係が変わります。
この位相差は、力率やインピーダンスの理解にも関係します。
電気電子系の実験では、位相差の測定は交流回路を理解するうえで重要です。
オシロスコープで位相差を測定する基本手順
オシロスコープで位相差を測定する基本的な流れは、次の通りです。
1. CH1とCH2に2つの信号を入力する
2. 2つの波形を同時に表示する
3. トリガを設定して波形を安定させる
4. 1周期Tを読み取る
5. 2つの波形の時間差Δtを読み取る
6. 位相差 φ = Δt / T × 360° で計算する
重要なのは、周期Tと時間差Δtを正しく読み取ることです。
周期Tは波形が1回繰り返される時間、時間差Δtは2つの波形の同じ位置どうしの時間のずれです。
手順1:CH1とCH2に信号を入力する
位相差を測定するには、オシロスコープの2つのチャンネルを使います。
一般的には、
CH1:基準にする波形
CH2:比較したい波形
のように接続します。
CH1を基準波形にする
大学実験では、CH1に入力信号、CH2に出力信号を接続することが多いです。
たとえば、RC回路の実験なら、
CH1:入力電圧
CH2:出力電圧
のように設定します。
このようにしておくと、「出力が入力に対して進んでいるのか、遅れているのか」を判断しやすくなります。
GNDの接続に注意する
オシロスコープで2ch測定を行うときは、GNDの接続に注意が必要です。
一般的な据え置き型オシロスコープでは、CH1とCH2のGNDが内部で共通になっていることがあります。
そのため、回路内の異なる2点にそれぞれGNDクリップを接続すると、意図せずショートする危険があります。
大学実験では、必ず回路の基準点にGNDを接続し、測定前に指導者や実験書の指示を確認しましょう。
手順2:2つの波形を同時に表示する
CH1とCH2に信号を入力したら、2つの波形を同時に表示します。
波形が見づらい場合は、縦軸と横軸を調整します。
VOLTS/DIVを調整する
VOLTS/DIVは、縦軸1目盛りあたりの電圧を表す設定です。
CH1とCH2の振幅が大きく違う場合は、それぞれのVOLTS/DIVを調整して、2つの波形が見やすい大きさになるようにします。
ただし、位相差を測定するときは、振幅そのものよりも横方向のずれが重要です。
波形が重なって見づらい場合は、縦方向の表示位置を少しずらすと読み取りやすくなります。
TIME/DIVを調整する
TIME/DIVは、横軸1目盛りあたりの時間を表す設定です。
位相差を測定するときは、1〜2周期程度が画面に表示されるように調整すると読み取りやすいです。
波形が詰まりすぎている場合は、TIME/DIVを小さくします。
1周期が画面に収まらない場合は、TIME/DIVを大きくします。
手順3:トリガを設定して波形を安定させる
位相差を測定するときは、波形を安定して表示することが大切です。
波形が横に流れている状態では、時間差Δtを正しく読み取ることができません。
トリガソースを設定する
トリガソースは、基準にしたい波形に設定します。
多くの場合、CH1を入力信号として使うため、トリガソースもCH1に設定します。
トリガレベルを調整する
トリガレベルは、波形の中央付近に設定すると安定しやすいです。
正弦波の場合は、0V付近や波形の中心付近に設定すると見やすくなります。
スロープを確認する
スロープは、波形がトリガレベルを通過する向きを指定する設定です。
位相差を測る場合は、立ち上がりでそろえるのか、立ち下がりでそろえるのかを統一することが大切です。
トリガ設定については、別記事「オシロスコープのトリガとは?波形が流れる原因と対処法」でも詳しく解説しています。
手順4:周期Tを読み取る
波形が安定したら、まず周期Tを読み取ります。
周期Tとは、波形が1回繰り返されるのにかかる時間です。
正弦波の場合
正弦波では、山から次の山まで、または谷から次の谷までが1周期です。
また、0Vを上向きに通過する点から、次に0Vを上向きに通過する点までを1周期としてもよいです。
方形波の場合
方形波では、立ち上がりから次の立ち上がりまで、または立ち下がりから次の立ち下がりまでが1周期です。
立ち上がりから立ち下がりまでを1周期と間違えないように注意しましょう。
周期Tの計算例
たとえば、1周期が横方向に5目盛り分あり、TIME/DIVが200μs/divだったとします。
この場合、周期Tは次のように求めます。
T = 5div × 200μs/div
T = 1000μs
T = 1ms
したがって、この波形の周期は1msです。
手順5:時間差Δtを読み取る
次に、2つの波形の時間差Δtを読み取ります。
時間差Δtとは、基準波形と比較波形の同じ位置どうしの横方向のずれです。
同じ条件の点を選ぶ
時間差を読むときは、2つの波形で同じ条件の点を選びます。
たとえば、正弦波なら、
- 山どうし
- 谷どうし
- 0Vを上向きに通過する点どうし
- 0Vを下向きに通過する点どうし
のように、同じ条件で比較します。
方形波なら、
- 立ち上がりどうし
- 立ち下がりどうし
を比較します。
時間差Δtの計算例
たとえば、CH1の波形の山とCH2の波形の山が、横方向に1目盛り分ずれていたとします。
TIME/DIVが200μs/divであれば、時間差Δtは次のようになります。
Δt = 1div × 200μs/div
Δt = 200μs
この時間差を使って、位相差を計算します。
手順6:位相差を計算する
周期Tと時間差Δtが求まったら、位相差を計算します。
位相差φは、次の式で求められます。
位相差 φ = Δt / T × 360°
ここで、
φ:位相差[°]
Δt:2つの波形の時間差[s]
T:周期[s]
です。
計算例
周期Tが1ms、時間差Δtが200μsの場合を考えます。
まず、単位をそろえます。
T = 1ms = 1000μs
Δt = 200μs
したがって、
φ = 200μs / 1000μs × 360°
φ = 0.2 × 360°
φ = 72°
この場合、2つの波形の位相差は72°です。
位相が進む・遅れるの判断方法

位相差を測定するときは、角度だけでなく、どちらの波形が進んでいるのか、遅れているのかも重要です。
基準波形より先に変化する場合
CH2の波形がCH1より左側にある場合、CH2はCH1より先に変化しています。
この場合、CH2はCH1に対して進んでいると表現します。
基準波形より後に変化する場合
CH2の波形がCH1より右側にある場合、CH2はCH1より後に変化しています。
この場合、CH2はCH1に対して遅れていると表現します。
表現例
たとえば、CH1を入力電圧、CH2を出力電圧としたとき、CH2がCH1より右にずれていれば、
出力電圧は入力電圧に対して72°遅れている
と表現できます。
逆に、CH2がCH1より左にずれていれば、
出力電圧は入力電圧に対して72°進んでいる
と表現できます。
カーソル機能を使って位相差を測定する方法
デジタルオシロスコープには、カーソル機能がついていることがあります。
カーソル機能を使うと、目盛りを目で読むよりも正確に時間差を測定できます。
カーソルで周期Tを読む
まず、基準波形の1周期にカーソルを合わせます。
正弦波なら山から次の山、方形波なら立ち上がりから次の立ち上がりにカーソルを置きます。
このとき表示される時間差が周期Tです。
カーソルで時間差Δtを読む
次に、CH1とCH2の対応する点にカーソルを合わせます。
たとえば、CH1の山とCH2の山にカーソルを置きます。
このとき表示される時間差がΔtです。
周期Tと時間差Δtがわかれば、
φ = Δt / T × 360°
で位相差を求めることができます。
自動測定機能を使う方法
一部のデジタルオシロスコープには、位相差を自動で測定する機能があります。
測定項目からPhaseや位相差に関する項目を選ぶと、CH1とCH2の位相差を表示できる場合があります。
自動測定のメリット
自動測定機能を使うと、周期や時間差を手動で読む必要がないため、短時間で位相差を確認できます。
測定値が画面に直接表示されるため、実験中の確認には便利です。
自動測定の注意点
ただし、自動測定機能は波形が安定していないと正しく動作しないことがあります。
ノイズが多い場合や、トリガがうまくかかっていない場合は、表示される位相差がふらつくことがあります。
そのため、自動測定値だけを信じるのではなく、画面上の波形のずれも確認しましょう。
リサージュ波形で位相差を見る方法
オシロスコープには、X-Yモードを使ってリサージュ波形を表示できるものがあります。
リサージュ波形を使うと、2つの正弦波の位相差を図形として確認できます。
X-Yモードとは
通常のオシロスコープでは、横軸が時間、縦軸が電圧です。
一方、X-Yモードでは、横軸にCH1、縦軸にCH2の信号を割り当てます。
その結果、2つの信号の関係が図形として表示されます。
リサージュ波形の見え方
2つの正弦波が同じ周波数で位相差が0°の場合、リサージュ波形は斜めの直線のようになります。
位相差が大きくなると、楕円のような形になります。
位相差が90°の場合、振幅が同じであれば円に近い形になります。
ただし、リサージュ波形から正確な位相差を求めるには、波形の読み取り方に慣れが必要です。
初心者や大学実験レポートでは、まずは時間差Δtから計算する方法を使うのがおすすめです。
RC回路での位相差測定例

ここでは、RC回路を例にして位相差測定の流れを考えます。
測定条件の例
RC回路に正弦波を入力し、入力電圧と出力電圧を測定するとします。
CH1:入力電圧
CH2:出力電圧
として接続します。
画面上で、入力波形と出力波形が横方向にずれて表示されているとします。
周期と時間差を読む

たとえば、測定結果が次のようになったとします。
周期 T = 1ms
時間差 Δt = 0.15ms
このとき、位相差は、
φ = Δt / T × 360°
φ = 0.15ms / 1ms × 360°
φ = 54°
となります。
結果の表現例
もしCH2の出力波形がCH1の入力波形より右にずれている場合は、
出力電圧は入力電圧に対して54°遅れている
と書けます。
逆に、CH2が左にずれている場合は、
出力電圧は入力電圧に対して54°進んでいる
と表現します。
大学実験レポートでの書き方例
大学実験のレポートでは、位相差の値だけでなく、どのように求めたかを書くとわかりやすくなります。
レポート記述例
オシロスコープでCH1に入力電圧、CH2に出力電圧を表示した。
画面上で1周期は5divであり、TIME/DIVは200μs/divであったため、周期Tは
T = 5 × 200μs = 1000μs = 1ms
となる。
また、CH1とCH2の山の位置のずれは0.75divであった。
したがって、時間差Δtは
Δt = 0.75 × 200μs = 150μs = 0.15ms
である。
よって、位相差φは
φ = Δt / T × 360°
φ = 0.15ms / 1ms × 360°
φ = 54°
となる。
CH2の出力波形はCH1の入力波形より右側にずれていたため、出力電圧は入力電圧に対して54°遅れていると考えられる。
このように、周期T、時間差Δt、位相差φ、進み・遅れの判断を順番に書くと、レポートとしてわかりやすくなります。
位相差測定でよくあるミス
オシロスコープで位相差を測定するときは、いくつか注意点があります。
周期Tと時間差Δtの単位をそろえていない
位相差を計算するときは、周期Tと時間差Δtの単位をそろえる必要があります。
たとえば、Tをms、Δtをμsのまま計算すると間違えやすくなります。
どちらも秒、ms、μsのいずれかにそろえてから計算しましょう。
半周期を1周期と間違える
正弦波の山から谷までは半周期です。
山から次の山までが1周期です。
方形波の場合も、立ち上がりから立ち下がりまでは通常半周期です。
立ち上がりから次の立ち上がりまでを1周期として読み取りましょう。
違う条件の点を比べてしまう
時間差Δtを読むときは、同じ条件の点を比べる必要があります。
たとえば、CH1の山とCH2の0V通過点を比べると、正しい時間差になりません。
山どうし、谷どうし、同じ向きの0V通過点どうしを比べましょう。
波形が流れたまま測定してしまう
波形が横に流れている状態では、時間差を正しく読み取れません。
位相差を測る前に、トリガ設定を確認して波形を安定させましょう。
CH1とCH2のGND接続を間違える
2ch測定では、GNDの接続ミスに注意が必要です。
特に、CH1とCH2のGNDが共通になっているオシロスコープでは、別々の点にGNDを接続するとショートする危険があります。
測定前に回路の基準点を確認し、安全な接続になっているか確認しましょう。
CH1とCH2の表示位置で進み・遅れを勘違いする
波形を縦方向にずらして表示している場合でも、位相差は横方向のずれで判断します。
CH2がCH1より右にずれているのか、左にずれているのかをよく確認しましょう。
右にずれていれば遅れ、左にずれていれば進みと考えるとわかりやすいです。
位相差測定の精度を上げるコツ
位相差測定では、少しの読み取り誤差が角度に影響することがあります。
ここでは、測定精度を上げるためのコツを紹介します。
画面に1〜2周期程度を表示する
波形を画面にたくさん表示しすぎると、1周期や時間差を細かく読み取りにくくなります。
位相差を測るときは、1〜2周期程度が画面に表示されるようにTIME/DIVを調整すると読み取りやすくなります。
カーソル機能を使う
目盛りを目で読むよりも、カーソル機能を使った方が時間差を正確に読み取りやすいです。
デジタルオシロスコープを使える場合は、カーソルで周期Tと時間差Δtを測定するのがおすすめです。
波形の同じ位置を選ぶ
時間差を読むときは、同じ位相の点を選ぶことが大切です。
正弦波では、山や谷よりも、0Vを同じ向きに通過する点の方が読み取りやすい場合があります。
ノイズを減らす
ノイズが多いと、山や0V通過点の位置が読み取りにくくなります。
プローブのGNDを短くしたり、測定点を見直したり、必要に応じて平均化機能を使ったりすると、読み取りやすくなることがあります。
プローブ補正を確認する
方形波やパルス波を測定する場合、プローブ補正が合っていないと波形の立ち上がりが歪んで見えることがあります。
プローブ補正については、別記事「オシロスコープのプローブ補正とは?なぜ方形波で調整するのか」でも解説しています。
初心者におすすめのオシロスコープ関連アイテム
位相差を測定する場合は、2ch以上のオシロスコープがあると便利です。
また、信号発生器やBNCケーブルがあると、正弦波を入力して位相差測定の練習がしやすくなります。
電子工作や大学実験の復習では、以下のようなアイテムがあると便利です。
- 2ch以上のデジタルオシロスコープ
- 10:1オシロスコーププローブ
- 信号発生器
- BNCケーブル
- ブレッドボード
- 抵抗・コンデンサ・コイル
- ワニ口クリップ付きリード線
オシロスコープを選ぶときは、チャンネル数、帯域幅、サンプリングレート、カーソル機能、自動測定機能の有無を確認するとよいです。
位相差測定を行うなら、最低でも2ch以上のモデルを選ぶのがおすすめです。
安全上の注意

オシロスコープを使うときは、安全にも注意が必要です。
特に、家庭用コンセントのAC100Vや商用電源を一般的なオシロスコープで直接測定するのは危険です。
また、2ch測定ではGNDが共通になっている場合があるため、接続方法を間違えるとショートや感電、測定器の故障につながるおそれがあります。
大学実験や電子工作では、まず低電圧の回路から測定しましょう。
商用電源や高電圧回路を測定する場合は、必ず指導者の指示に従い、必要に応じて差動プローブや絶縁された測定環境を使用してください。
まとめ
オシロスコープで位相差を測定するには、2つの波形を同時に表示し、周期Tと時間差Δtを読み取ります。
位相差は、次の式で求められます。
φ = Δt / T × 360°
ここで、Tは1周期の時間、Δtは2つの波形の時間差です。
位相差測定の基本手順は、次の通りです。
1. CH1とCH2に2つの信号を入力する
2. 2つの波形を同時に表示する
3. トリガを設定して波形を安定させる
4. 周期Tを読み取る
5. 時間差Δtを読み取る
6. φ = Δt / T × 360°で位相差を求める
CH2の波形がCH1より右にずれていれば、CH2はCH1に対して遅れています。
CH2の波形がCH1より左にずれていれば、CH2はCH1に対して進んでいます。
大学実験では、位相差の値だけでなく、周期T、時間差Δt、計算過程、進み・遅れの判断まで書けるようにしておくと、レポートの完成度が上がります。

コメント