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はじめに

大学の電気電子系の実験でよく使う測定器の一つに、オシロスコープがあります。
オシロスコープは、電圧の時間変化を画面上に波形として表示できる便利な測定器です。
しかし、初めて使うときに多くの人が困るのが、
「波形が横に流れてしまう」
「波形が止まらない」
「画面に何が表示されているのかわからない」
という問題です。
このようなときに重要になるのが、トリガという機能です。
この記事では、オシロスコープのトリガとは何か、なぜ波形が流れるのか、どう設定すれば安定した波形を表示できるのかを、大学実験で使う初心者向けに解説します。
オシロスコープのトリガとは

トリガとは、簡単に言うと、波形を表示し始めるタイミングを決める機能です。
オシロスコープは、入力された電圧信号を時間に対して表示します。
しかし、信号は常に変化しているため、何も基準を決めずに表示すると、波形の開始位置が毎回ずれてしまいます。
その結果、画面上では波形が横に流れているように見えます。
そこでトリガを使います。
トリガでは、
「電圧がある値を超えた瞬間から波形を表示する」
というように、表示を開始する条件を決めます。
この条件がうまく合うと、毎回同じタイミングから波形が表示されるため、画面上で波形が止まって見えるようになります。
つまり、トリガは波形を安定して観察するための基準点のような役割を持っています。
なぜ波形が流れるのか

オシロスコープで波形が流れてしまう主な原因は、トリガが正しくかかっていないことです。
たとえば、正弦波や方形波を観察しているとします。
本来であれば、波形の同じ位置から毎回表示されれば、画面上の波形は止まって見えます。
しかし、トリガ条件が合っていないと、オシロスコープは表示を開始するタイミングをうまくそろえられません。
そのため、表示される波形の位置が毎回少しずつずれ、画面上では波形が左や右に流れて見えます。
特に大学実験では、以下のような原因で波形が安定しないことがよくあります。
- トリガレベルが信号の範囲外にある
- トリガソースが違うチャンネルになっている
- AUTO/NORMALの設定を理解していない
- プローブやGNDの接続が不十分
- 入力信号が小さすぎる
- ノイズが多い
波形が流れているときは、まずトリガ設定を確認することが大切です。
トリガレベルとは

トリガ設定で特に重要なのが、トリガレベルです。
トリガレベルとは、オシロスコープが波形の表示を開始するための電圧の基準値です。
たとえば、0Vから5Vまで変化する方形波を観察している場合、トリガレベルを2.5V付近に設定すると、波形が安定しやすくなります。
これは、信号が2.5Vを通過するタイミングを基準にして、毎回同じ位置から波形を表示できるためです。
一方で、トリガレベルを10Vに設定してしまうと、信号は10Vまで到達しないため、トリガがかかりません。
また、トリガレベルを信号の最大値や最小値ギリギリに設定しても、ノイズの影響で不安定になることがあります。
基本的には、トリガレベルは波形の中央付近に設定すると安定しやすいです。
スロープとは

トリガには、スロープという設定もあります。
スロープとは、信号がトリガレベルを通過するときの向きを指定する設定です。
主に以下の2種類があります。
- 立ち上がり:電圧が低い値から高い値へ上がるとき
- 立ち下がり:電圧が高い値から低い値へ下がるとき
たとえば方形波の場合、電圧が0Vから5Vに変化する瞬間が立ち上がり、5Vから0Vに変化する瞬間が立ち下がりです。
立ち上がりでトリガをかけると、波形は立ち上がり部分を基準に表示されます。
立ち下がりでトリガをかけると、波形は立ち下がり部分を基準に表示されます。
どちらを選んでも波形を安定させることはできますが、観察したい部分に合わせて選ぶと見やすくなります。
大学実験では、特に指定がなければ、まずは立ち上がりエッジで設定することが多いです。
AUTOとNORMALの違い

オシロスコープのトリガモードには、代表的なものとしてAUTOとNORMALがあります。
初心者が混乱しやすいポイントなので、簡単に整理しておきます。
AUTOモード
AUTOモードでは、トリガがかからない場合でも、オシロスコープが自動的に波形を表示します。
そのため、信号が入っているかどうかを確認したいときに便利です。
ただし、トリガ条件が合っていない場合でも画面は更新され続けるため、波形が流れて見えることがあります。
NORMALモード
NORMALモードでは、トリガ条件が満たされたときだけ波形を表示します。
そのため、トリガが正しく設定されていれば、安定した波形を観察しやすくなります。
一方で、トリガがかからない場合は画面が更新されないため、初心者には「何も表示されていない」と感じることがあります。
最初はAUTOモードで信号の有無を確認し、その後NORMALモードで波形を安定させる、という使い方がおすすめです。
波形が流れるときの対処法

オシロスコープで波形が流れるときは、次の順番で確認すると解決しやすいです。
1. トリガソースを確認する
まず、トリガソースが正しいチャンネルになっているか確認します。
CH1に信号を入力しているのに、トリガソースがCH2になっていると、正しくトリガがかかりません。
CH1で測定しているなら、トリガソースもCH1に設定します。
2. トリガレベルを波形の中央付近に合わせる
次に、トリガレベルを波形の中央付近に設定します。
正弦波なら、最大値と最小値の間あたりに設定します。
方形波なら、HighレベルとLowレベルの中間あたりに設定すると安定しやすいです。
3. スロープを設定する
立ち上がりで観察したい場合は、立ち上がりスロープを選びます。
立ち下がりを基準にしたい場合は、立ち下がりスロープを選びます。
迷った場合は、まず立ち上がりに設定しておけば問題ないことが多いです。
4. TIME/DIVを調整する
波形が見づらい場合は、横軸の時間設定であるTIME/DIVも調整します。
時間軸が広すぎると波形がつぶれて見え、狭すぎると一部しか表示されません。
1〜2周期程度が画面に表示されるように調整すると、波形を確認しやすくなります。
5. VOLTS/DIVを調整する
縦軸の電圧設定であるVOLTS/DIVも重要です。
信号が小さすぎると、波形がほとんど見えません。
逆に大きすぎると、画面からはみ出してしまいます。
波形全体が画面内に収まるように調整しましょう。
大学実験でよくあるミス

大学実験でオシロスコープを使うときには、トリガ以外にも注意すべき点があります。
GNDを接続していない
プローブの先端だけを回路に当てても、GNDが正しく接続されていないと安定した波形は得られません。
オシロスコープは、プローブ先端の電圧をGND基準で測定しています。
そのため、回路の基準点とオシロスコープのGNDを正しく接続する必要があります。
プローブ倍率が合っていない
プローブには×1や×10の倍率設定があります。
プローブ側が×10になっているのに、オシロスコープ側の設定が×1のままだと、表示される電圧値が実際とずれてしまいます。
測定前に、プローブ側とオシロスコープ側の倍率設定が一致しているか確認しましょう。
AC結合とDC結合を間違える
オシロスコープには、AC結合とDC結合の設定があります。
DC結合では、直流成分を含めた波形を表示します。
一方、AC結合では直流成分がカットされ、交流成分だけが表示されます。
直流オフセットを含む信号を正しく見たい場合は、DC結合にする必要があります。
入力信号が小さすぎる
入力信号が非常に小さい場合、ノイズに埋もれて波形が安定しないことがあります。
この場合は、VOLTS/DIVを小さくしたり、測定点を確認したりする必要があります。
トリガを理解すると実験がかなり楽になる
オシロスコープは、最初はボタンや設定項目が多くて難しく感じる測定器です。
しかし、波形を安定して表示するために重要なポイントは、それほど多くありません。
特に大切なのは、
- トリガソース
- トリガレベル
- スロープ
- TIME/DIV
- VOLTS/DIV
の5つです。
波形が流れるときは、まずトリガレベルを波形の中央付近に合わせ、トリガソースが正しいチャンネルになっているか確認しましょう。
これだけでも、多くの場合は波形が安定して表示されます。
まとめ

オシロスコープのトリガとは、波形を表示し始めるタイミングを決める機能です。
トリガが正しく設定されていないと、表示開始位置が毎回ずれてしまい、波形が横に流れて見えます。
波形が流れるときは、以下の点を確認しましょう。
- トリガソースが測定しているチャンネルになっているか
- トリガレベルが波形の範囲内にあるか
- トリガレベルが波形の中央付近にあるか
- スロープ設定が適切か
- TIME/DIVとVOLTS/DIVが見やすい値になっているか
- GNDやプローブ倍率が正しく設定されているか
オシロスコープは、電気電子系の実験では必ずと言っていいほど使う重要な測定器です。
最初は難しく感じるかもしれませんが、トリガの考え方を理解すると、波形観察がかなり楽になります。
大学実験で「波形が流れてしまう」「波形が止まらない」と困ったときは、まずトリガ設定を見直してみてください。


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